お花を持って

ブラインドを開けて「わぁ〜♪」っと思った。
眩しい青空が広がっている。
うららかな春の陽気。
教室を終えて、午後は母のお見舞いに行った。
途中お花が好きな母のために花屋さんに寄った。
オレンジと白の花で、春らしい明るいアレンジにしてもらった。
病院に入ると目の前を女性が歩いている。
なぁ、と囁く夫に私は頷いてクスっと笑った。
母だった。
ゆっくりではあるが足取りはしっかりしており、
やがて階段を上り始めてようやく私達に気づいてくれた。
古い友人が訪れてくれたのを、たった今見送ったところだと言う。
痛みもなく順調に回復しているのが分かり、嬉しかった。
ベッドの上で持参した小さな花かごの包装を取ると、
深呼吸して「ああ、いい香り」と目を細めてくれた。