DVを目の当たりにして何もできなかった


片側1車線の狭い路上。
向こうから歩いてきた若い男女。
突然男が女性の膝の辺りを蹴り飛ばした。
前のめりになった女性が路面に手をついた瞬間、男は追い討ちをかけるように相手の太ももに足蹴を入れた。
ドスッという重い音が10メートルほど離れた私の耳に響いた。
男は振り向きもせず先に歩いて行く。
カーッと頭に血が上った私は「大丈夫ですか!」と駆け寄ろうとした。
すると女性は「来ないで」というように手のひらを私に向けた。
そしてよろよろと立ち上がり、足を引きずりながら男のあとを追って歩き始めた。
多分もし私が関わったら、女性は後でもっと酷い目に遭うのかも知れない。
…私の耳には今でもサンドバックを蹴るような鈍い音がこびりついている。
思い返すと何だか吐き気がして気持ちが沈む。