エムル14歳の選択

今日はエムルの学校のカウンセリングに行ってきた。
前から予定を言うと気が重くなるだろうと思って、
今日の午前中に「夕方、学校に行くよ」と伝えた。
案の定エムルは拒否反応を示した。
だから私は言った。
「用意された器の中から飛び出して、わざわざ険しい山道を歩くんでしょ。
今から嫌だと思うことを避けててどうするよ。
パパとママは応援するって言ったでしょ。
戻るつもりがないなら、戻りませんって、誰の前でも言えるようにしな!」


と、言うわけで渋々行くには行ったが、エムルの口は重かった。
今後もカウンセリングを続けることはできないか…
というカウンセラーの提案もきっぱり断り、
カウンセラーは「あまりお役に立てなかったようで申し訳ありません」
と頭を下げたが………
私自身は得るものがあった。


実はエムルはこの数ヶ月、嫌がらせを受けていたことを打ち明けた。
詳しいことは「言いたくない」とそれきりだったが、
親も教師も親しい4〜5人の友達でさえ、
エムルが安定した友人関係や部活を楽しんでいるという認識しかなかったので、
新しい発見だった。
しかもエムル自身「いじめじゃないと思う」と言いながら、
日に日にその環境が彼女を追い詰めていった感じを私は受けた。


私「そういうことを友達に話したりしなかったの?」
M「うん」
私「なんで?」
M「そういう話しは(お互いに)出ないから」
私「だって○○ちゃん達、エムルのことすごく心配してくれてんじゃん。
  そういうの話すの、大事なことじゃないんだ?」
M「うん。あんまり…」
私「もしその嫌がらせがなければ学校に通っていたの?」
M「多分、大丈夫だったと思う」
私「嫌がらせがなくなれば学校に戻る気はあるの?」
M「今はもうない」
私「嫌がらせをした相手はそのまま変わりなく過ごしてるのに、
  エムルはそこから去ることで負けたような気持ちにならないの?」
M「少し悔しい気はするけど…もういいって思う」
私「この先も同じように何か嫌なことがあったらどうする?
  また逃げる?」
M「大勢だと逃げるかもしれないし…少ない人数なら頑張るかも…」
そういえば3ヶ月ほど前、主に夕食のときなど、
エムルが急に私に話しかけるようになった時期があった。
テレビ番組などのたあいのない話題が多かったが、
あるときふと、□□部と××部の女子に軋轢があり、
クラスでも体育館でも雰囲気が悪くて嫌になると話していた。
今となってはそれが関係あるのかないのかも分からないが。


エムルの無断欠席はあまりにも突然だったが、
彼女は数ヶ月も前から葛藤していたのだと思う。
戦わずして逃げたのではなく、戦う方法が見出せなかった。
我慢を続けたが耐えきれなくなった、と言う方が
当たっているかもしれない。
不登校から2週間そこそこで結論を出すのは早急に見えるかもしれない。
でも、もうこれ以上長引かせる必要はないと思った。
だって死ぬことさえ考えたエムル。
死ぬくらいなら別の場所でやり直そうと決心がついたのかもしれない。
そうね、エムルはもう決めてしまったのだ。
悩んだり迷ったり誰かに相談したり話し合う時期は、
エムルにとって過去のものに過ぎない。


で、カウンセラーにはフリースクールに通う方向で
エムルも親も準備をしたいと伝えた。
すると、「フリースクールは市内にはいくつかあって、
教育委員会が設けている所は中学校への出席と同じ扱いになるのですが」
ほほう…私もエムルも身を乗り出して渡された資料を見た。
その名は『相談指導学級』…しかも小学校の中に設けられている……
装丁やタイトルで本の売上も変わってくるご時世に、なんじゃこりゃ…
エムルの好奇心がみるみる失せていくのを感じる。
名より実だってことは百も承知の私でさえ魅力を感じなかった。
帰る道々「ついでだから見に行ってみる?」と聞くと、
「見学は(私がネットで調べて教えた)△△学園だけでいい」ってさ。