『夏の約束』(読書記録②)

藤野千夜著、講談社文庫、448円(税別)。
あっという間に読み終えちゃった。
5年前の芥川受賞作だけど、シンプルで読みやすかった。
芥川賞は純文学だと思ってたけど違うのかな。

「あいつら世間のこと、なんにも知らねえのかよ」
「当たり前っしょ。ガキだもん」
「いや、あのうち八割はそのまま大人になって、一生誰かを笑っていくんだね」
「だったら幸せっしょ」
…とか、
アポロン(犬の名前)はね、世界の八割くらいが私なんだ。だから愛情注いであげないと」
「で、あとの二割は?」
「ご飯かな」
…なんて、わずか二割にも満たない少数派の属する世界が、
そこに住む人にとっては八割の幸せな世界に反転するんだよっていうのが、
声高でなく伝わる優しい小説だった。
もうひとつ収録されてる『主婦と交番』は、
−さすがに自分でもどうかしているとは思ったものの、実際のところ、
なつ美はいつだってどうかしているので別に構わなかった。−
というくだりがカラッと乾いていて良かった。