『阿寒に果つ』

渡辺淳一著、角川文庫。
(なんと今年は1月以来、わずか2冊目の本!)
この本は高校生の時に一度読んだ。
かなりセンセーショナルに宣伝されていた記憶もある。
ヒロインの純子が自分と同世代ということで興味を持ったし、
当時はそれなりに刺激を受けたように思う。
30年経てあらためて読み、正直言って退屈だった。
私の感受性が退化したのかもしれない(笑)
ヒロインは「水晶の六面体のように様々な面をもつ」
魅力的で神秘的な女性として描かれているが、
私には誰に対しても同じ態度、同じ行動をとっているように見える。
それが6人の言葉で(6章)繰り返されているだけだ。
純子が唯一手に入れられなかったものは初恋の相手だけというが、
もう一人、東京に去っていった姉がいる。
姉を見送るホームで顔を覆いうずくまる純子の姿だけが、
それまでの彼女にはない一面に思えた。
また彼女の自殺は自己愛のように締めくくられているが、
容姿、才能、内面の魅力などに常に自信が持てなかった、
例えばマリリン・モンローサガンなどと同種ではないかと感じた。
芸術家や女優、作家が絶えず創作意欲を持ち続けるのは難しい。
マネージャーや編集者など、優れた人材に恵まれるラッキーも必要だ。