美術の時間

J学園フリースクール部の美術を担当していたTさんが体調を崩し、
ピンチヒッターを頼まれ行って来た。
私の姓はありふれているので、できれば名前で呼んで欲しいと言うと、
「Kちゃ〜〜〜ん!」と一斉に元気な声が返ってきた。
良かった!まずは仲間入り成功。
初回は子供達がどんな風に美術の時間を過ごしているのか、
手探りの気持ちで取りあえず様子を見る。
葉書大の白い紙に、Tさんが残していった「クリスマスカード」のテーマを
描く子、ゲームのキャラクターを描く子、自由にイラストを描く子。
にぎやかに何枚も描き進めるグループの一角で、
折鶴を前にデッサンしようと一本線を引いては消している子がいた。
鶴の羽を描こうとしているが、なかなか前に進まない。
ああ、この子は今頭の中で一生懸命鶴の絵を描いているんだな。
そう思って遠くから見ていた(描き出すまでに私もすごく時間がかかるし、
そういう人は途中で見られると手が止まってしまうのだ)。
授業が終わる頃には、長い時間白いままだった紙にきれいな折鶴が描かれていた。
また、白い紙を前にじっとうつむいている子が2人。
「今日は特に描きたいものが見つからないのかな?」と声を掛けてみた。
2人ともコクンと頷く。
「じゃ、ちょっと面白いことをしよう」と、目をつぶって縦に5本、
横に5本の線を書いてもらった。
「できた升目に好きな色を塗ってみようか?」と言うと色鉛筆に手を伸ばし、
さっそく2人で何やら楽しげに色を塗り始めた。
できたところで「次はちょっと難しいよ。見てのお楽しみ」と、
再び目をつぶって波線を同じように書いてもらった。
波線に囲まれた部分を見て「難しいな〜これ」と言いながらセッセと塗っている。
子供達から教えられることはとても大きい。
絵を描くのに決まり事は何もない。
遊びと同じだと思う。
だから楽しく、できれば熱中して過ごせる時間にできればいいなと思った。
よっしゃ〜〜〜、また面白いこと考えるぞ・・・っと。