『インストール』

綿矢りさ著。
2年程前、そのタイトルと作家が17歳であることやナントカ賞受賞作、
というのに惹かれて娘にと買った文庫本の1冊。
娘は興味がなかったのか、読んだ形跡はない。
娘の本棚から引っ張り出して、替わりに読んでみた。
受験を目前にした女子高生の、現実逃避した非日常の数日間をえがいている。
一夜のうちに自分の部屋をすっからかんにするという、
(机やベッドなんか女の子一人で家族に気付かれずに運び出すなんて)
全くありえない事から話は始まる。
少々しらけながらも、なぜかサクサクとページは進んでいった。
「歌手になりたい訳じゃない作家になりたい訳じゃない、でも中学生の頃には確実に両手に
握り締めることができていた私のあらゆる可能性の芽が、気づいたらごそっと減っていて、
このまま小さくまとまった人生を送るのかもしれないと思うとどうにも苦しい。
もう17歳だと焦る気持ちと、まだ17歳だと安心する気持ちが交差する。」
ドキッとした。
こういう思いは一昔前は就職を前にした大学生あたりが感じたことではなかったか。
この作品は2001年に受賞した作品というから、その後どんどん低年齢化して、
今はともすれば小学生でも感じていることかもしれない。
現実逃避した先に名探偵コナンのような大人びた小学生の相棒かずよしがいて、
無事フツーの日常に戻れた「私」は幸運だったと思う(所詮小説だからね)。
現実には、逃避さえできずにもがいている子供達がどれくらいいるか………