娘のピアス

月曜日に中2の娘が学校を無断欠席して、
お友達からの電話でそれを知ったのが午後8時。
「部活で遅くなる」と言ってたが、さすがに心配していた矢先だった。
すぐに夫と息子に帰ってきてもらって、
他の親しいお友達や先生にも連絡を取り、警察に捜索願を出した。
その朝、いつまでも制服に着替えないので聞くと、
娘は「卒業式に使う工作をするので、私服登校なんだよ」と言っていた。
警察に服装を聞かれて、私は上から下まで詳しく思い出しながら涙が出た。
普段と変わりなく、笑顔で赤い手袋の手を振ってくれたのに…
娘の部屋の小テーブルには「21日(月)提出」となっている書きかけの作文と、
クロゼットにしまってあるはずの家の鍵が
部屋のドアからすぐ見える位置に置かれていた。
自分を見つけて欲しいという娘からのSOSは、他にもいっぱい残っていた。
玄関には娘がいつもバックに付けている、
クマのプーさんのマスコットが落ちていた。
学習机の上のノートには家族それぞれに宛てたメッセージ。
夫と息子は二手に分かれて捜しに出た。


家で待つ私に10時過ぎ電話があった。
娘からだった。
「帰ってもいい?」
11時過ぎ、家の外で待っていた私に娘は走って飛びついてくれたわ。
「死のうと思ったけどできなかった」
娘の両手首には数日前と思われるものから、まだ血がにじんでる新しいのまで
それぞれ10本以上の切り傷があった。
そして娘の左耳にはピアスが2つ…


いま娘は自分の部屋に引きこもるわけでもなく、
家族がいれば居間に降りて一緒にテレビを見たり食事をしたり、
以前のままお手伝いもしてくれるし普通に過ごしてる。
私も普通に仕事に行っている。
夫はインフルエンザになっちゃって昨日病院へ行った。
私も風邪で今日病院へ行ってきたわ(笑)
そんな私達を娘は「大丈夫?」と気遣ってくれる。


部活は楽しいし、友達もいる。
勉強は嫌いだけど学校が嫌いなわけじゃない。
家族にもありきたりな不満はあるだろうけど、
それは仕方ないことだと娘自身わかってる。
それでも寂しかったんだろう。
漠然とした厭世観があったんだろう。
回りは自分を見てくれてるってことを実感したかったんだろう。
時間がかかるだろうけど、
娘が自分からピアスを外して学校に戻るまで、
私は待つことに決めたんだよ。