告知

用事があって訪れた実家で、日頃は頑健な父の様子がいつもと違うと感じたのは
1ヶ月半ほど前だったろうか。急激に痩せて生気がない。
聞けば喉がつかえる感じがして食欲もないという。
夏バテだと言っていたが妙に嫌な感じがしたので、
母に早く病院へ連れて行くように言った。
父は病院嫌いなので、行きたがらないようだったら電話して頂戴と言って帰った。
3週間ほどして母から「食道にガンが見つかった」と連絡があった。
もっと詳しい検査をするために入院することになった。
入院しても検査は順番待ちで、「早く検査して欲しいのに…」と訴える母に、
「高齢者のガンは進行が遅いので急変することはないから大丈夫」と慰めた。
このときはまだ手術で治るものと楽観していた。
そして昨夜、母から検査の結果が出たと電話。
進行性の食道癌でリンパ節に転移。5センチほどに肥大し食道を圧迫している。
5段階で3.5から4の進度。手術はできない状態である、と・・・
母も昨年から検査入院を繰り返し、検査と同時に見つかった大腸ポリープを
切除するなど体調は良くない。
そんな母が気丈にできるだけ冷静に話してくれているのに、
私は途中から涙があふれて止まらなくなった。
今は入院生活にも退屈するほど元気で、週末には実家に帰って来ている父が、
やがて抗がん剤放射線治療の副作用で苦しむことになるのだろうか。
幼い頃の思い出が浮かんでは消える。


今朝、目が覚めて、悪い夢でも見たような錯覚におちいった。
そしてすぐに現実のことなのだと思い直した。
早くこの現実を受け入れなくてはと思う。